【課長】主任さん!
【主任】ぎゃーーー!
うゎっ! なに、叫んでんだよ!
なんだ、課長ですか。驚かせないでくださいよ。 寿命が2日ぐらい縮みましたよ。
主任さんって、呼んだだけだよ。
さっき、法務の鈴木さんに怖い話を聞いてたんですよ。
あっそう。じゃぁ仕事なんだけどね...
B事業部の建物あるじゃないですか...
何、話し始めてるんだよ。仕事、仕事、
あっ! 課長、怖いんですね。
くだらない。
まだ、昼休み10分あるじゃないですか。聞いてくださいよ、10分で終わりますから。
はぁ〜〜 勝手に話せよ。
B事業部の建物に地下室があるの知ってます?
あぁ〜 知ってるよ。
鈴木さんの友達がB事業部にいるらしいんですけどね、夜の11時ごろにやっと仕事が終わって帰るとき、その地下室の前を通ったら、聞こえたらしいんですよ。
何が?
か細い女性の声で.....
何て言ってたの?
我が社のミッションステートメント読んでたんですって。
それは、怪談なのか、ギャグなのか、夢の話なのか、いったい何なんだよ? 中途半端な話をしやがって。
本当の話なんですからしかたないじゃないですか。
どこの幽霊が会社のミッションステートメント読むんだよ。
それは、幽霊に聞いてください。
馬鹿馬鹿しい。
最近、ミッションって言葉あんまり聞きませんよね〜。5、6年前でしたっけミッションマネージメントとか流行った時期がありましたけど。
別に、流行ったわけでもないし廃ったわけでもないよ。もともと重要なものなんだから。最近あまり言われないのは、当たり前のこととして定着したからだろ、きっと。
ミッションをマネージすることぐらい簡単ってことですか?
チームや個人が独立的に自分達のミッションを定義することは比較的簡単だと思うよ。でも、会社のミッションから個人のミッションへ過不足なく落としこんで、環境変化に対応して更新していくのは結構大変だと思うけどね。そこそこ、大きな企業になったら不可能じゃないかな。
そんなもんですかね〜。
何をするときも一緒だとは思うけど、スナップショットできれいに見える絵を作るのは結構簡単だけど、その状態を維持していくのはものすごく大変だよ。
うちの会社のミッションステートメントは誰が考えたんですか?
社長らしいよ。
漠然としてますよね〜。
結構苦心したらしいよ、確実に伝えるメッセージとしては明確に且つシンプルに書いたほうが正確に伝わり易いけど、事業の展開の可能性を考えるとあまり範囲を決め込みたくないって思いがあったらしくて。
へぇ〜〜....ところで、なんで幽霊はミッションステートメント読んでたんですかね〜 怖いですよね〜。
知らないよ....そんなことより、あのロッカーを平気で使うことのできる主任さんのほうが怖いけどね〜。
えっ! 僕のロッカーなんかあるんですか!?
あっ! 知らずに使ってたの? 人事も人が悪いな〜。聞かなかったことにして。
何があったんですか!? 正直に教えてくださいよ!
15年ぐらい前にね、あのロッカーを使ってた社員が行方不明になったんだよ。半年ぐらいして深夜まで残業していた社員が、そのロッカーの前を横切ろうとしたとき中から.....
.....中から?
あっ! 10分経ったよ、主任さん。さ〜仕事仕事。
....気になるけど、怖くて聞けない....