【主任】あ〜苦しい。昼ごはん食べ過ぎちゃった。課長、ベルト緩めていいですか?
【課長】あんたのベルトのことまで知らんがな。勝手に緩めてくれ。
簡単にダイエットできる商品を誰か開発してくれませんかね。
食べ過ぎなきゃいいんだよ。実に簡単だ。
わかってませんね、課長。それは、禁煙できない人に、タバコを吸わなきゃいいんだよってアドバイスしてるのと同じですよ。思いやりも何もない。
俺は、昼飯食いすぎて苦しむ男に与える思いやりは持ち合わせてないんだよ。悪いけど。
これはもはや現代病ですよ。
入院でもなんでもしてくれ。休職するか?なんなら友達の医者に診断書書かすけど。
まぁアップはこれくらいにして、研究開発についてどう思いますか?
あんたは仕事の話をするのに、いちいちバカ話のアップがいるんか?それになんで突然研究開発なんだよ?
この前研究所でスタッフやってる友達と話をしていたんですけど、マネージメントされているようには聞こえなかったんですよね。
研究開発にはタッチしないほうがいいと思うよ。
どうしてですか?結構な予算を使っているし重要じゃないですか。我が社の研究開発部門がどんな管理をしているか知ってますか?
今は、お金の張り方としては、評点法とプロジェクトを組合わせてるんじゃなかったっけ?
一般的な研究室レベルでのテーマは評点法で予算がついて、それとは別に重要テーマに関しては別途プロジェクトとして予算がつくんですよね。“今は”ってどういう意味ですか?
短い期間でころころ変わるんだよ、だから良くなっているのか悪くなっているのか経営側から判断できない。まぁ管理がうまくいかないからころころ変わるんだろうけどね。
我が社だけでなくて一般的にも研究開発の管理は難しいっていいますよね。何がそんなに難しいんですかね?
我々みたいな一般的なメーカーの経営的立場で言えば、研究開発のリスクと他の部分のリスクの種類が違いすぎて同じ枠組みでマネージメントできないのが原因じゃないかな。研究開発の成果が収益を支配する製薬メーカーなんかはうまくやってるみたいだから。まぁうまくやれるところだけが生き残ったんだろうけどね。逆に言えば我々の業界は研究開発をうまくマネージメントできなくても生き残れるから研究開発がうまくいかないともいえるかな。変な理屈だけどね。
確かに今年一番の屁理屈ですね。
それから、誰も大きな声では言わないんだけど、研究者の価値観に対する不信感ってのも無視できないと思うよ。
それはどういう意味ですか?
営業にしても企画にしても経営者にしても利益をゴールにしているよね。まぁお客様の笑顔って言う答えがあってもいいとは思うけど。でも、研究者のゴールというか成功の定義は微妙に違うと思うんだよね。だから、経営者としてはそういう価値観の違う人種を信用できずに変な管理法を押し付ける。研究者はその隙間を縫って自分のゴールに駆け込もうとする。結局成果はあがらない。それと、担当役員や研究所の所長の平均的な任期よりもテーマが実るまでの時間のほうが長いのも影響してるんじゃないかな。言いたい意味はわかるだろう。
課長らしくないですね。どうして、自分が手に取れる実をつける木にしか水をやろうとしない。と世界の中心で真実を叫ばないのですか?
それは、ここが世界の中心ではなく会社の片隅だってことと、少し前から室長がこっちのほうをじっと見ているというのが理由だよ。
.....ところで、我が社は研究開発のマネージメントが遅れてるんですかね。
わからないな〜。
ベンチャーなんかは技術開発をコアにしてるんだから管理できてるんじゃないですかね?
それは違うんじゃない。ベンチャーは研究開発を終わってから事業を立ち上げるんだから。走りながら2つ目の研究開発に取り組んだりはしないだろ。資金もないし。
研究テーマをポートフォリオで管理する例を見たことがありますけどうまくいきませんかね。
プロットが信用できなかったらポートフォリオは機能しないだろう。
打つ手なしですか。
そう、研究開発はアンタッチャブル。
全部、事業部に移して価値観を強引に揃えてしまうってのはどうですか?
そういう主張をする人もいるけど、必ず、長期的な技術開発ができなくなるとか、横断的な技術開発ができなくなるって主張する人が現れる。どちらの主張にも一理あるんだけれど、どちらを選択してもうまくいかなくて何年後かに反対側に振れる。
いいのかな〜そんな調子で。研究開発は重要だと思うんだけどな。
ところで、腹の張りは元に戻ったの?
あ!だいぶ消化したみたいです。なんかおなかすいちゃったな。
やっぱり、あんた病気だよ!